トップ  > Kazu's BLOG  > 【英語】1を教えるには10を知っておく:「状態動詞は進行形にできない」を例に

【英語】1を教えるには10を知っておく:「状態動詞は進行形にできない」を例に

こんにちは、広島市の四技能型・英検対策の英語塾、スクール今西の今西一太と申します。

先日、中学校2年生からずっとご通学いただいた方が推薦入試で大学に合格し、卒業されました。お礼をお送りいただき、とてもうれしかったです。

さて、今回は「1を知るには10を知っておく」というテーマで書こうと思います。

 

1.「文系大学生なのですが数学を塾で教えたいです」

最近たまに Quora というオンライン質問サイトを見るのですが、そこに面白い質問と回答がありました。(以下は私が意味を抜粋して書き換えた質問文です)

Q「文系の大学生なのですが塾で数学も教えられるようになりたいです。何か復習用にちょうどよい参考書などはありませんか」

この質問に対する解答のうち1つがなかなか辛辣かつ示唆に富むものでした。(これまた抜粋)

「あなたが数学を教えるのはやめた方がよいです。1を教えるためには10の事を知っている必要があります。そうでない先生にモノを教わる学生は不幸になります。」

私はこれを読んで「なるほど、本当にそうだよなぁ」と思いました。

※ただ、「学力が非常に低い学生が比較的安価な授業料でマンツーマンの指導を受けることができる」という意味では、数学をちょっと復習した大学生が中高生を教えるのは意義があることなのではないかとも思います。言い換えれば、「0.1のことを教えるために1の事を知っている」ような感じになるでしょうか。この回答者の方は結構高いレベルを想定していらっしゃる感じを受けます。

 

2.状態動詞は進行形にならない?

英語で言えばこんな例でしょうか。

「know, remember, resemble, like, love などの動詞は状態を表しており、これらの動詞は進行形にならない」

例)× I'm knowing her.

このようなことは高校レベルの参考書なら大抵書いてあります。(例:『高校リード問題集I』 p.16、Grammar in Use Intermediate 4th edition, p.8 など)

ただ、実際の用法を見てみると、これらの動詞が進行形で使われる例など山のように見つかります。例えば私は最近以下の動画の中で

I'm remembering ...

と言っているのを聞きました(3:19ごろ~)。

どういうことかというと、

状態動詞であっても特殊な意味を表すために進行形にすることがある

ということです。

例えば『現代英文法講義』(安藤貞雄)p.125 では「推移的特徴」として以下のような例を挙げ、「推移的という特徴が加わったため進行形が可能となっている」と述べています。

I've settled in now and am liking it very much.
「私は引っ越して落ち着きました。そしてここがとても好きになっています。」

つまり、状態動詞を進行形にすることで「徐々に~しつつある」という意味を表すことができる、ということです。

このことを知らずに高校の参考書だけを読んだ先生が生徒から

「先生、I'm remembering という例を見たんですけど、これは大丈夫なんですか?」

と質問されてしまったら、もうアウトでしょう。

 

3.10を知ったうえで、この生徒に1を教えるべきか5を教えるべきかを考える

教科書に書いてあることをそのまま教えるだけなら、教科書を読んでもらった方が早いはずです。

じゃあなぜそこに先生が存在する価値があるのかというと、教科書以上の事や関連事項もいろいろ知っていて、その中から生徒のレベルに応じて取捨選択して教えていく、ということに付加価値があるわけです。

言い換えると、

10の事を知っておいて、今の状況で1まで教えるか、5まで教えるか、生徒の状況や理解度を見て判断する

というのが先生の仕事になるということです。

上の例であれば非常にざっくりいうと

1. 【基本】状態動詞は進行形に基本的にしない
2. 【高校文法で頻出】ただし一時的な状態を表す I'm living などはよく出てくる
3. 【イディオムに近い】それに関連して He is being selfish. などの
be動詞の進行形もある。
4. 【高校レベルを超える】さらに、頻度は低いが推移を表す場合などに
I'm liking などの言い方をするときもある

などの複数のレベルのうち、今目の前の生徒に提示すべきものはどこまでなのかを、生徒の理解度やレベルを検討して判断し、指導するという作業が必要になってきます。

「先生、I'm remembering という例を見たんですけど、これは大丈夫なんですか?」

と質問されたら、

「お、そんなことにまで気づくとはなかなかいいセンスしてるな。じゃあレベル4まで教えてやるか」

と判断して教える、となるわけです。

逆に

1 を教えて「へー、初めて知った」となっている生徒に対して3や4を教えるのは避けた方がよい

という判断にもなります。(ただし、とても優秀な生徒の場合はあえて一気に応用まで教えるという手段もアリ。そういう「生徒のレベル判断」も重要)

 

4.まとめ

以上、、

・先生は教科書に書いてあることの何倍ものことを知っている必要がある
・そのうち、今目の前にいる生徒にどこまで教えるかを適切に判断する必要がある

ということについて話をしてきました。

人に何かを教える際は常にこのことを意識しておきたいものです。

 

 

at 2022/12/09 10:54:19